アナログレコードに適した音圧の調整方法とは?

iPodの登場以降、イヤフォンで音楽を聴くことを想定したマスタリングが主流となり、音圧が過剰に高められるようになりました。デジタルの場合は、そのような音圧処理を最優先に考えるべきかとも思いますが、レコードの場合はどうなのでしょうか?ここでは、レコードに最適な音圧処理について、紹介してみたいと思います。

音圧調整はダイナミクスを大切に

CUT&RECでは、これまでに様々なジャンルの音楽をダブプレートに刻んできましたが、聴いていて心地良いレコードを作るためには、ダイナミクスが大切な要素のひとつだと感じています。

音楽におけるダイナミクスとは抑揚のことで、音の強弱を表します。コンプレッサーなどのエフェクトを使って音の強弱を少なくし音圧を高めますが、音圧を高めることでダイナミクスが失われてしまいます。

音楽メディアsoundropeに掲載したDJ/作曲家の野崎良太さんのインタビューで、お客さんがクラブに長居しなくなったのは、DJが使う音源の主流がオーディオファイルに変わったことも関係あるのではと話されていましたが、実際に自身が感じているように、その影響は否定できないのではないかと思います。

アナログメディアであるレコードは、分割された音をサンプリングして再生されるデジタルとは違い、音が間引かれることなく連なって再生されます。レコードを聴いて得られる体感は、生演奏によるライブ感に近いものがあります。デジタルでリリースされた音源とは異なる感動を得られるのが、ライブの醍醐味のひとつとも言えますが、オーディエンスの感動を引き出す効果のひとつとして、音の抑揚が挙げらます。

レコードの場合、デジタルに比べて失われる音声成分が少ないため、音の抑揚も忠実に再現されます。よって、オリジナルの音楽をレコードに収録する場合は、ダイナミクスを活かしたマスタリングを行うことで、より心に響く、感情に訴えかけた作品を作り出すことができます。

手軽にマスタリングできるウェブサービス「Landr」

音楽のクオリティを向上させる手段として、マスタリングは欠かせません。マスタリングは、音量や音像の調整、そして音圧の調整が主な作業となりますが、誰でも簡単にできるわけではありません。よって、マスタリングエンジニアへ依頼するケースも多いかと思いますが、予算もそれなりに必要になります。

そこで、手軽にマスタリングを行いたいとう方へお勧めなのが、オンラインのマスタリングサービス「Landr」です。Landrは、AIによる自動マスタリングが可能な月額マスタリングサービスで、使用頻度に応じた3つのプランが用意されています。例えば、月額¥400のベーシックプランであれば、自動マスタリングされたWAVファイルを1曲¥899でダウンロードすることができます。

Landrでは、Low(低音圧)/Medium(中音圧)/High(高音圧)の3つの音圧から、好みのマスタリングが施されたマスターファイルを作成して、ダウンロードできます。マスターファイルの作成前に、3つの音圧による違いを聴き比べられるので、お好みの音圧を選択してください。

元となる音源のミックス状態にもよりますが、アナログレコードへ収録するためのマスターファイルを作成する場合は、音圧が高すぎないLow(低音圧)または、Medium(中音圧)が良いかと思います。

Landrのプレビュー画面

Landrはデジタル向けのマスタリングなので、アナログに収録する場合の相性はどうかなと、Landでマスタリングした楽曲を使ってカッティングしてみたのですが、問題ありませんでした。ですが、Landrのマスタリングに物足りなさを感じたり、こだわりのアナログ用マスタリングが必要な場合は、マスタリングエンジニアさんへ依頼することをお勧めします。意見を交わしながら作業を進められるエンジニアさんへ依頼することで、よりイメージ通りのアナログレコードに仕上がるはずです。

アナログ向けマスタリングは、ダイナミクスを大切に。Landrを使用する場合でも、エンジニアさんへ依頼する場合でも、音の抑揚は、聴いていて心地よいアナログレコードを作るための大切な要素となるので、参考にしてください。